12話 家族が集う所

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社会人になってから、家族と会う回数が減った。

自分は大学入学と同時に一人暮らしを始め、今年で一人暮らし7年目に到達した。

一人暮らし自体はとても楽しい。

料理も家事も、月々の支払い等を含めても、何か不満や不便を感じたことはない。

寂しさを感じたこともない。

自分の性に合っているようだ。

この先また誰かと一つ屋根の下で過ごせるかどうかだけが唯一の不安かもしれない。

それほどまでに、一人暮らしが自分に根付いている。

昨日、2年振りに家族が揃った。

家族仲が良いため、素直に嬉しかった。

とはいえ、集う前の心境は(久し振りの皆はどんなかな)と大きな期待と微小な緊張をする。

しかし、会ってしまえばそんな緊張もすぐになくなった。

天気も曇りから晴れ間を見せ、まるで自分の気持ちを表しているようだった。

会って話すと、お互いを理解し合えている事を改めて感じる。

性格が似ているわけでもないし、考え方はそれぞれ全然違う。

しかし、根幹部分の思考が似ている。

これを遺伝というのか、それとも教育というのか。

みんな変わっているのに変わらない。

そんな昔に似た景色がそこにはあったように思う。

一人暮らしの寂しさは全くないが、家族と会うと昔を懐かしく感じ、多少戻りたい気持ちも出てくる。

郷愁というやつだろうか。

そんな懐かしむ気持ちがある一方で、みんながそれぞれの今の暮らしを話す場にもなっていて、それもまた面白い。

楽しい話ばかりでも、辛い話ばかりでもない。

今の話だ。

今起きてることを聞いてくれるのがありがたい。

別に意見を求めるわけでもない。

人の考え方について正解・不正解を話すこともない。

ただ、自分の考えを言って、それを聞いて一緒に悩み、考えてくれる人がいる。

なんて心強いんだろう。

そんな話ができることはありがたいことだ。

次に集うのがいつになるかは分からないが、その日にまた自分が色々話せるように知識も経験も蓄えておこう。

そう強く思った。

自分が蓄えた知識も経験も、家族に役立つことがある。

そう思うと自分だけの意志以上の力が出せそうな気がする。

今後も辛いことがあったら言おう。

楽しいことも言おう。

気兼ねなく、何を言ってもいいんだ。

そう心から思える素敵な時間だった。

時が経っても、場所が変わっても、帰る所がある自分は幸せ者だ。

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