2020年度岩手大学の過去問を解いたので解答・解説をしていく。
今回は前期・理工学部の問題を解いた。(理工学部以外の学部や後期の問題ではないので注意)
解説という訳ではなく、あくまで自分用のまとめみたいなものだ。
各大問の詳細な解答・解説は別記事で行っているのでそちらを参考にしてもらいたい。
リンクは各大問の概評に貼ってある。
この記事はあくまで大問ごとの大きな基本方針を述べるに留める。
その問いを初見で見た時にどう考えると解法が見えるかの言語化に注力している。
では、まずは問題から見ていこう。
問題
試験時間(目安):90分
2020年度 岩手大学 前期日程 理工学部 数学[ https://www.iwate-u.ac.jp/upload/images/032.rikou_sugaku.pdf ]
※上記URL:国立大学法人岩手大学HP 過去問ページより 2020年度 前期日程 理工学部数学
※過去3年分が公式HP(下記URL)から閲覧できます。掲載終了している可能性もあります。
参考URL『国立大学法人岩手大学HP-過去問題-』
https://www.iwate-u.ac.jp/admission/disclosure/past.html
解くのを楽しみにしてる方は是非解いてみてほしい。
楽しめると思います。
では、解説していこう。
全体
先に問題形式などの確認をしておこう。
時間 | 100分 |
入試科目 | 数学Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・A・B |
出題形式 | 筆記 |
問題数 | 大問5つ |
次に概評。
全体の難易度は日東駒専以上GMARCH以下といったところだろうか。
基本的な問題が多く、何かしらの問題集を1冊終えた人であれば全く初見という問題は少ないのではないだろうか。
GMARCH志望の人は合格点を取りたいところ。
120分と時間も十分にあるが、大問1つで12分と考えると悠長に悩んでいる暇はない。
基本問題ゆえ解法を瞬時に思い出し、正確に計算をしていくことが求められる。
1問ごとに小問が3〜4つほどあるため、時間配分は小問ごとに決めて取り組むと時間によって大幅に乱されることはなさそうだ。
さて、それでは各大問の解説をしていこう。
大問1概評
大問1は様々な単元の小問集合の問題だ。
具体的には
- (1)関数の極限(数Ⅲ)
- (2)2直線のなす角
- (3)指数対数の不等式
- (4)確率の加法定理
が並んでいる。
難易度としてはGMARCHレベルだろうか。
とはいえ、(4)が飛び抜けて簡単であるため、ここは落とせない。
(1)〜(3)も解けない人はいそうだが基本問題ではある。
小問集合のため、誘導はない。
ゆえに解法には悩まず、時間をかけずにどんどん解いていきたい。
解答・解説 → 「143話 2020 岩手大学 過去問大問1【解答解説】」
(1)関数の極限
まずxを∞に飛ばすと「∞ – ∞」の不定形となる。
根号を含む不定形は有理化を考える。
有理化をした後は分母の発散が一番強いもの(分母の最高次数)で分母分子を割れば良い。
(2)2直線のなす角
2直線のなす角は
- 直線の傾き(tanθ)の利用
- 法線ベクトルの利用
をすぐに思い付くようにしたい。
今回は「なす角を求めたい」というより「なす角を使った三角比を求めたい」というのがゴールのため、法線ベクトルではなく傾きの利用で求めよう。
tanが求められた後は三角比の相互関係から求めよう。
(3)指数対数の不等式
ゴールは「不等式を満たす最小の自然数を求める」ということから「n>●」という形を目指すことが分かる。
今、nが指数部分にあるため対数をとって指数部から下ろしてあげよう。
今回は問題文で真数が3の常用対数が用意されているため、常用対数を取ることにしよう。
後は間違いないように計算していけば良い。
(4)確率の加法定理
「赤玉の数が白玉の数より多い」というところから余事象を考えることもできる。
今回の解答は余事象ではなく直接求めることで解いた。
排反事象より確率を足して結論を得る。
大問2概評
大問2は楕円と接線・法線、それらで囲まれた部分の面積の問題だ。
難易度としては日東駒専以上GMARCHでは易問といったレベルだろうか。
問題自体はかなり基礎的なことを問いているような問題ではあるが、楕円というテーマが正答率を下げているといった感じだ。
(1)が解けている人はその後も順調に解けていそうな問題であるため、(1)を解けるかどうかというのが大きな分かれ目になりそうだ。
楕円は避けがちなテーマではあるが、中堅〜難関と言われる大学ではよく扱われるテーマではある。
解答・解説 → 「144話 2020 岩手大学 過去問大問2【解答解説】」
(1)楕円の接線
接線の方程式は多くの人が知っているだろう。
だが、楕円と言われると悩んでしまう。
その理由として、いつも扱っているのは y が1次であるのに対し、楕円は y が2次であることが挙げられる。
楕円というだけで苦手と感じる人は多いと思うが、実はやっていることは全く同じで「xで微分して接点を代入したものが接点における傾き」ということだ。
その際に y は x の関数であることから、合成関数の微分をすれば良い。
その後は分かりやすいように y’= の形を作れば良い。
(2)法線の方程式
(1)で接線の傾きが分かるため、法線の傾きは直ちに求められる。(傾きの積が -1 )
あとは法線の方程式の通りに記述すれば良い。
(3)分数式の最大・最小(相加・相乗平均)
求める面積をまずは図をかいて確認。
すると三角形であることが分かるため、面積自体は9ab/8といった形で求めることができる。
ここでabの最大・最小を考えていくという流れになるが、ここで考えるのがaとbの2変数関数の最大・最小問題だということだ。
多変数関数の最大・最小問題の解法パターンは以下の通りだ。
一つ一つの詳細はここでは書かないが、今回有効なのが逆像法だ。
逆像法とは、簡単に言えば「=kとおいてkの存在範囲を求める」というものだ。
今回はab=kとおき、kがどのような範囲にいるかを考えていく。
kをa,bの式と合わせて最大・最小を求めていく。
解答の通り式変形をしていくと最終的に4次関数の最大・最小問題へと落ち着くため、求めることができるということだ。
その際に、a,bの取りうる範囲には十分に注意しておこう。
そうでなければkが取れないはずの値を取ってしまう可能性が出てくるからだ。
何を求めたくてどんな作業をしているのか見失わないように気を付けよう。
(3)【別解】相加・相乗平均
他変数関数の最大・最小問題の処理として、有名不等式の利用というものがある。
その内の一つが相加・相乗平均だ。
知っているけど使えない公式ランキング上位であろうこの不等式。
今回相加・相乗平均で解答を作成するとこんなにもあっさり記述できてしまう。
では、どう考えたら相加・相乗平均の利用に至るかだが、ポイントは楕円の式が2乗の和で記述され、求めるものがabという積であるということだ。
和と積の形を確認したら相加・相乗平均が有効であることがある。
そのため、和の最小や積の最大を見たら(ん?もしかして相加・相乗平均使える?)という気付きがあると良い。
相加・相乗平均は2つの数が正の時にしか用いることができないのでその点には注意しよう。
大問3概評
大問3は数列の問題だ。
難易度としては日東駒専レベルだろうか。
1問1問が非常に分かりやすい誘導になっているため、(4)など見たことのないような形も一つ一つ誘導に乗って解いていけば良い。
解答・解説 → 「145話 2020 岩手大学 過去問大問3【解答解説】」
(1)階差数列
階差数列は「元の数列の2項間の差」に現れる数列のこと。
ゆえに元の数列の差を考えていけば良い。
いくつか具体化したらあとは計算で求めにいこう。
今回は直ちに求められたが、階差数列を調べても分からない時は階差数列の階差数列を取ることも意識しておこう。
(2)階差数列の漸化式
階差数列の漸化式は「元の数列の初項と階差数列のn-1項までの和」から求めることができる。
階差数列を使う際は必ずn≧2でチェック、最後にn=1の確認をすることを忘れないようにしよう。
(3)級数
解答の通りに2次と1次の和を考える。
あとはシグマ公式の通りに計算をしていけば良い。
展開や約分などはせず、共通因数で括れるように式変形していくと良い。
(4)種々の数列
(3)で求めたSnを代入して求めるTnを確認しよう。
すると、分数型の和であることが確認できるため、部分分数分解を用いることになる。
あとは通分しながらまとめてあげれば解答を得る。
大問4概評
大問4は図形と方程式の問題だ。
難易度としては日東駒専以上GMARCH未満といったところだろうか。
すべての大問が基本的なレベルで、(3)は原点を通る直線OPの傾き(正三角形)が見えたかどうかで決まる。
二等辺や有名角が与えられたら初等幾何の登場かもしれないとアンテナを張っておくことが重要だ。
解答・解説 → 「147話 2020 岩手大学 過去問大問4【解答解説】」
(1)2点間の距離
「2点間の距離が等しい」というのが問題の状況。
2点間の距離は三平方の定理によって導かれる。
座標や成分の公式を覚えてもいいが、それらをいちいち覚えていなくても「2点間の距離は三平方の定理」で理解してしまった方が色々な問題や状況に応用が効く。
座標でもベクトルでも複素平面でも、全て2点間の距離は三平方の定理だ。
また、距離が等しい時に平方根が出てくるのが嫌なため、あらかじめ2乗しておくと良いだろう。
この手の式変形は問題集にもよく載っているためよく知られているが、ひとつだけ注意しておきたいことがある。
それが「距離だから両方正の数」という条件だ。
正負のどちらの実数も、2乗すると必ず正になる。
ゆえに2乗した値が等しいからって元の数が等しいとは限らないということだ。
例えば-2と2は異なる数であるが、2乗すればともに4になる。
ゆえに、「2乗した数が等しいから元の数が等しい!」とはならないことがあるため注意が必要だ。
「両方正の数」という条件がつけばマイナスが除外され、「2乗した数が等しいから元の数が等しい!」と言える。
解答の「OP>0 , OQ>0より」という一言は必ず入れる癖をつけていこう。
(2)軌跡の方程式
軌跡の方程式の基本処理は
- 求める点を(X,Y)とおいて媒介変数表示
- 媒介変数の存在条件を求める
という手順で求められる。
まず求める点を(X,Y)ということは有名解法なため出来ている人が多いのではないだろうか。
分からなかった人もここで学べば差は埋まったのだから気にする必要はない。
その後の「媒介変数の存在条件を求める」というところで(ん?)ってなる人はいるのではないだろうか。
軌跡を学習した人で多いのが「媒介変数(文字)の消去をすればいい」と覚えているパターンだが、これは合っているが本質的ではない。
媒介変数の消去ができる問題では有効だが、実は媒介変数の消去をしても存在条件に注意する問題や、そもそも媒介変数の消去がうまくできない問題は沢山ある。
こういった時に意識したいのが媒介変数の存在条件を求めるということだ。
今回文字消去としか考えなかった人の解答には最後に(x>0)の記述がないのではないだろうか。
逆に、媒介変数の存在条件を意識している人の解答には当たり前に(x>0)の記述がある。
これは媒介変数tがどの範囲で存在しているかに目を向けられているか否かの差だ。
tに範囲があって、tとxに関係(式)があるのであれば当然xにも範囲がある。
それは実数全体という範囲かもしれないし、開区間や閉区間など範囲は様々だ。
今回はtが0より大きいという存在条件からxの存在条件を求めた形になる。
今回の問題では存在範囲について詳細に説明することはできなかったが、これからも必ず媒介変数の存在する範囲がどこかということには目を向けていって欲しい。
媒介変数tの存在条件を確認したら、XとYの関係式からtを消去して結論を得る。
(3)平面ベクトルの内積
まず、条件から△OPQが正三角形であることに気付きたい。
多角形に関する問題では辺と角の情報が何よりも重要になる。
辺と角さえ求めてしまえば多角形の解答は見えてくる。
今回のように多角形問題が座標で与えられることもあるが結局重要なのは辺と角だ。
座標というのは点に住所を与え、点と点の距離、すなわち、辺の長さを考えられるようにしたものだ。
辺の長ささえ分かれば別に座標は必要ではない。
ゆえに、多角形の問題を見たらまず辺と角の情報を探しにいくのだ。
そういった意味で、今回の正三角形のような辺の長さも内角も全て分かるような図形は非常に扱いやすい。
正三角形に気付くと60°の角の条件に目がいく。
辺の長さは t が入ってきてしまい不確定要素が多いからだ。
ここまで分かれば「平面上の3点(平面図形)」、「座標(成分)」、「辺のなす角」という条件からベクトルで解けそうという発想になるのではないだろうか。
ベクトルの発想に至ったらもう安心で、「ベクトルで角度問題」と言えば必ず「内積処理」だ。
「成分での内積」と「大きさとなす角の内積」の等式で結論を得る。
【別解】(3)傾きの利用
問題を簡単に把握するために図示した人は解答のような図をかいているだろう。
ここで、正三角形であることに気付くと直線OPの傾きが分かる。
この傾きの発想は「原点」であることと「有名角(60°)」であることから考えられる。
(tan60°から連想もできる)
あとは傾きに着目して立式すれば解答を得る。
大問5概評
大問5は楕円と回転体の体積の問題だ。
難易度としてはかなり標準的で日東駒専レベルだろうか。
GMARCHレベルはないだろう。
1問1問が基本的で重要な問題になっているため、楕円の基本は抑えたけど演習足りてないという人にはいい問題なのではないだろうか。
解答・解説 → 「148話 2020 岩手大学 過去問大問5【解答解説】」
(1)楕円の方程式
楕円の方程式は頂点や焦点、長軸や短軸の長さを与えられることで求めることができる。
(他にも円からの変形や軌跡についての問題などもある)
その中でも頂点が与えられた際は特に計算が必要なく直ちに求めることができるため、ここは確実に抑えておきたい。
軸上の場合は各頂点がそのまま分母になることを知っておこう。
また、その後陰関数を陰関数のまま扱うのは難易度が高いため、y≧0という条件を与えて陽関数の話に切り替える。
「y=」の形が作りたいと思えば式変形は2次方程式を解く方法と同じだ。
2乗すると全ての実数は正の値になるため、2乗から次数を下げる時は必ず正負の条件に注意するよう気をつけよう。
(2)定積分、置換積分
「平方根のa2-x2」という有名な形の置換積分の問題。
覚えていた人はそれでいいが、ここではなぜ三角関数への置換が有用かを数学の専門用語などを用いず自分の表現で述べておきたい。
sinやtanと置換する場面があったことは覚えている人が多いと思うが、ではなぜsinやtanの置換すると上手くいくのか考えたことはあるだろうか。
それは、三角比の特徴として「2乗に強い」というものがあるからだ。
xの2乗はxの2乗以外の意味持たないが、三角比の2乗は三角比の相互関係によって様々な形への式変形が可能なのだ。
つまり、積分に置いて2乗の情報があった時に、なんのヒントも脈絡もないかもしれないが、三角関数に置換することでまだ式変形の余地があるということだ。
積分や通常の式変形において、2条の形があって、どうしても手詰まりという時は発想の一つとして三角比への置換を持っておくといいだろう。
置換後はいつも通り範囲を調べ、計算ミスないように計算をしていけばよい。
(3)回転体の体積
回転体の体積が直接求められない場合は、足したり引いたりしながら求める部分の体積がどうやって求められるかを考えよう。
「(上の関数)ー(下の関数)で求めれば良い」と習った人もその通りではあるが、計算は楽に越したことはない。
微分積分は特に計算力が求められるため、なるべく計算が簡単な形に持っていこう。
今回は楕円で2乗の計算も楽で、かつ、三角錐の体積を求めることも簡単であることから解答のような発想に至った。
(楕円のy≧0での方程式)ー(直線の方程式)で解いてもいいが、今回は上記のような解答が解きやすくていいだろう。
イメージが難しい場合は図示しながら考えると良い。
定積分の計算は数Ⅱでも扱う整関数(xnの関数)の積分であるため割愛。
さいごに
公式の模範解答はこちら
https://www.iwate-u.ac.jp/upload/images/050.zenki_kaitourei_2.pdf
参考URL:国立大学法人岩手大学HP 過去問ページより 2020年度 前期日程 解答
岩手大学は全体的に発展問題は扱わず、基礎的な問題をしっかりその形で扱えるか、また、大問の最後に見慣れないような問題をおいてしっかり誘導に乗りながら問題の流れを汲み取れているかを聞いている良い問題だった。
簡単に解ける問題も大問の(1)には多く見られるため、3つの大問完答くらいで周りと差がつくのではないだろうか。
逆に、誘導が強い分、(1)で間違えるとその間違いを引きずりながら(2),(3)と間違えてしまうため(1)こそ超慎重に確実に正解しよう。
解いた方、お疲れ様でした。
これからも楽しんでいきましょう。
その他過去問を解く人はこちらから → 『特集 過去問振り返り まとめ』
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