133話 2020 北里大学 過去問振り返り

ep-math

2020年度 北里大学獣医学部獣医学科の入試問題を解いたので、振り返りと解法の確認をまとめておこうと思う。

解説という訳ではなく、あくまで自分用のまとめみたいなものだ。

各大問の詳細な解答・解説は別記事で行っているのでそちらを参考にしてもらいたい。

リンクは各大問の概評に貼ってある。

この記事はあくまで大問ごとの大きな基本方針を述べるに留める。その問いから学べることの言語化に注力している。

では、まずは問題から見ていこう。

問題

解くのを楽しみにしてる方は是非解いてみてほしい。

楽しめると思います。




では、解説していこう。

全体

先に問題形式などの確認をしておこう。

時間70分
入試科目数学Ⅰ・Ⅱ・A・B
出題形式筆記(解答のみ記入あり)
問題数大問7つ

次に概評。

問題の難易度としては基本的で、問題番号が後半になるほど難易度が上がっていく。

問題数の空白箇所自体は多くはないが、大問7つで70分であるから前半は駆け抜けるように解いていく必要がある。

大問6までは解答のみで良いため、途中式に力を入れずに解けるようにしておきたいが、過去問練習として利用している我々としては途中の論理も重要視していきたい。

さて、それでは各大問の解説をしていこう。

大問1概評

大問1は基本的な対称式の問題だ。

問題集や教科書で一度は解いたことがあるような問題であるため、この問題は抑えておきたいところだ。

解答・解説 → 「124話 2020 北里大学 過去問大問1【解答解説】

大問1(対称式、整数部分)

対称式の基本処理は

  1. 基本対称式を求める
  2. 対称式を基本対称式で表す

だ。

整数部分・小数部分の問題も複合して出てくる形は模試などではよくある形だ。

無理数の整数部分はルートの中身の大小で限定していく。

また、今回のような4次式のような高次方程式は「=0」になる式を用いて次数下げを考えよう。

次数を下げる式(割る式)の次数は低い方が余りの次数も低くなるため有効だ。

大問2概評

大問2は分数式・三角関数の最大・最小問題の問題だ。

まず、分数式の最大・最小で相加・相乗平均を疑うようにはしたい。

また、見たことがない形は見たことある形への変形(置換・同値変形)もしくは誘導にのることを考えられるようにしたい。

見たことがないから解けない、ではなく、ではどうするかに注目していこう。

解答・解説 → 「126話 2020 北里大学 過去問大問2【解答解説】

大問2(分数式の最大・最小、三角関数)

分数式の最大・最小問題ではすぐに数Ⅲの分数式の増減表の作成を疑う前に、まずは相加・相乗平均を考えよう。

使えるか使えないかがすぐに判断つく上に、圧倒的に時短になるからだ。

相加・相乗平均を用いることができる条件として

  • 相加・相乗平均を用いる2つの数が定義域や前提で正数になるような状況であること
  • 相乗平均を考えた後に変数がなくなること

が挙げられる。これを調べることは容易のため、まずは相加・相乗平均を考えよう。

等号成立条件は相加・相乗平均を用いた2つの数が等しくなるときだ。

その後の三角方程式では、平方根からも考えられるが、2乗を考えよう。

平方根があることも2乗を考える大きな一因だが、そもそも三角比自体2乗ととても相性が良いため常に解法の候補としてなければいけない。

積分や三角方程式・不等式では2乗することはよくあるので知っておこう。

2乗後はsinでもcosでもtanでも何でもいいのでどれかに揃えよう。

最終的にcosが問われていることを踏まえて式変形していくと良い。

大問3概評

大問3は剰余の定理の典型問題だ。

合格者の大半は解けていることが予想されるため、こういった基本問題は解けるようにしておきたい。

解答・解説 → 「127話 2020 北里大学 過去問大問3【解答解説】

大問3(剰余の定理)

整式の割る式と余りが与えられたら剰余の定理を考えよう。

除法の性質を考えるときに必要なのは

  • 割られる式
  • 割る式
  • 余り

こういった情報について記載がある時は除法の性質を念頭に置いて、剰余の定理・因数定理を考えよう。

2乗の解法について、数学Ⅲを学んでいない人(積の微分法を学んでいない人)は別解が数学Ⅱまでの解法となるためそちらを確認してもらいたい。

数学Ⅲの微分の知識が使える人も、解答を見てもらえれば分かる通り別解の法がコンパクトに解答を記述できる。

一方、微分を用いた解法はお決まりの処理で解けるといったメリットがある。

理系の人はどちらでも解けておく必要がある。

大問4概評

大問4は場合の数、順列、組合せの問題だ。

クとケの空白は基本的な問題で正答率は高そうだ。

その一方で、コの空白はそんなに大多数が正答というわけではなさそうだ。

ゆえに、志望者はコまでしっかり解けるかどうかが合格者になれるかどうかの分かれ目ということを意識して復習などをしてもらいたい。

解答・解説 → 「128話 2020 北里大学 過去問大問4【解答解説】

大問4(場合の数、順列、組合せ)

「重複」と言われると累乗の形(48)を想定する人もいるかもしれない。

その発想は間違っていないが、今回は「組合せ」を問われているため、累乗の形で答えは得られない。

分からなくなったら簡単に具体化・実験をしてみると良い。

今回キの解答は「4個の中から重複を許して8個選ぶ」というのを「〇を8個、×を3個並べる」ということに言い換えて計算した。

これは

  1. 4個の中から重複を許して8個選ぶ
  2. 8個〇を並べる、〇では数字の区別がないため区別の仕切りとして〇の間に仕切りの×を3つ入れる
  3. 数字を表す〇を8個、区切りを表す×を3個並べる

といった思考の流れだ。

また、「それぞれ一個以上選ぶ」と言われたら「先に1個ずつ確定させてしまう」というのがポイントだ。

今回で言えば、8個選ぶと言いながらも0、1、2、3を1個ずつ選ばなければいけないため、先に1個ずつ選んでしまえばいい。

残りの4個を自由に選べばいいため、残りの4個で解法はキと同じだ。

最後に、クで難易度が上がる理由が場合分けだ。

場合の数の問題については「漏れなく、重複なく」数え上げれば間違えない。

自分が思い付いた方法がどうしたら「漏れなく、重複なく」数え上げることができるかのみ考えよう。

今回は1、2、3を1個ずつ選ぶことを考えたときに、残りの0の個数で場合分けを考えれば良い。

余事象的な発想で、注目するべき個数が複数のときは注目しないものの個数を気にするということだ。

1、2、3の個数については明らかに対称性があるため、1の個数に注目して、2と3の場合はそれが3通りで×3すれば良い。

大問5概評

大問5はベクトルの問題だ。

ベクトルは、図形の単元において位置を気にしない単元である分、比との相性は非常に良く、面積比を考えやすい。(当然相似比、体積比との相性も良い)

そういった点で言えばこの問題は解けておくべき問題のように思う。

面積比はあまり得意でない人が多い印象だが、そんな難しいものでもない。

この問題を通して、ベクトルにおける問題の扱い方をしっかり把握していこう。

解答・解説 → 「129話 2020 北里大学 過去問大問5【解答解説】

大問5(平面の位置ベクトル、面積比)

まずは初歩的な三角形の面積比の問題から始まる。

イメージとしては長さが短くなったらその分面積も小さくなると思えば良い。

例えば、Pの位置とQの位置分だけ面積が小さくなるということだ。

その後のRの位置ベクトルについては、「RはAQ上かつBP上」で係数比較でも良いが、メネラウスやチェバ、図形の性質などで比が分かればその方が計算は速くて間違いがないと個人的には思う。

今回はメネラウスの定理を用いてAR:RQの辺の比を求めてRの位置ベクトルを求めた。

その後、Sの位置ベクトルはチェバの定理でも良かったが、せっかくRの位置ベクトルを求めたのでその流れで解いた。

最後の面積については、最初に面積を求めた流れを活用して考えると良い。

大問6概評

大問6は数列、漸化式の問題だ。

今回は問題文で置換後の形が与えられているため、置換できるように式変形できるかどうかが問われる。

今回の置換の式変形は基本レベルとも言えるため、数列の置換が苦手な人はここで訓練しておくのが良いだろう。

大問全体から見ると難しめで、全体の正答率は他の大問と比べるとだいぶ落ちるのではないだろうか。

北里大学志願者はもちろんGMARCHや地方国公立を志望している人もしっかり解けるようにしておきたいところだ。

解答・解説 → 「130話 2020 北里大学 過去問大問6【解答解説】

大問6(数列、漸化式)

漸化式は2項間の関係のため、1項の値が分かればもう1項の値が求められる。

第3項の値は第2項の値を用いて求めることができ、第2項の値は第1項(初項)の値を用いて求めることができる。

その後置換する数列bnが与えられ、数列{bn}の漸化式を考える。

置換後の漸化式の作り方はbn+1から始めてbnを作るというのを考えよう。

何から始めていいかに悩むことはなく、bn+1から始めて式変形をしていけばいい。

  1. bn+1からan+1の式を得る
  2. an+1からanの式を得る
  3. anからbnの式を得る

2の作業までは何も考えずに手を動かそう。

最後にbnを作ることにのみ思考を働かせ、bnを得られるように式変形しよう。

{bn}の漸化式が得られたら、初項を求めて一般項を得る。

あとはbnとanの関係式から一般項anを求めて結論を得る。

大問7概評

大問7は2次関数で囲まれた面積と面積の最小値の問題。

2次関数の面積の中でも今回は定義域が変動するタイプ。

定義域が動こうが、軸が動こうが、頂点が動こうがやることは

  1. 平方完成して
  2. 簡単なグラフをかいて
  3. 求める面積の確認

という手順で解いていこう。

グラフを確認したら求める状況に漏れがないかを確認しながら、必要に応じて場合分けをしよう。

解答・解説 → 「131話 2020 北里大学 過去問大問7【解答解説】

(1)2次関数で囲まれた面積

a=0で定義域が固定されているので、変数aは気にせず2次関数の最大・最小問題を求めにいこう。

概評でも書いたが、

  1. 平方完成して
  2. 簡単なグラフをかいて
  3. 求める面積の確認

をすれば良いですね。

この問題においての注意点は、積分する際に関数とx軸との位置関係だろうか。

位置関係が「(上の関数)ー(下の関数)」で積分するようにしよう。

また、別解を記載したが、6分の1公式が有効なパターン(2次関数に直線で蓋の形)であるため、そちらの解答もできるようにしておこう。

1<aによる面積がどこのことを指しているのかグラフで確認しよう。

その後しっかりと積分計算をしていけば良い。

計算ミスはないように気を付けよう。

(3)2次関数で囲まれた面積、3次関数の最大・最小

(1)、(2)でa=0、1≦aは確認済みなので、まだ確認していない0<a<1の区間の面積を求めにいこう。

全ての場合漏れなく面積を求めたら、その中で最小なものがこの問題の解答となる。

ということで、0<a<1の区間の面積を求める。

面積の求め方は(1)、(2)と同様なので割愛。

面積がaの式で求めることができたら、あとは求めたaの式の最大・最小問題へと話は変わる。

3次関数の最大・最小問題は微分して増減表で処理しよう。

最後に(1)、(2)、(3)で求めた面積のなかで最小の瞬間に一番小さいものを解答にしよう。

さいごに

北里大学は一問一問の難易度は日東駒専と同等程度の難易度ではないだろうか。

ただし、時間制限を考えると結構厳しい気もする。

計算力や解法の発想は悩まずスッと出せるようにしておかなければ試験本番では時間不足になってしまいかねない。

また、獣医学部ゆえ高得点の競争が予想される。

6割取ると合格圏と言われる大学受験だが、北里大学獣医学部獣医学科に関しては合格のため7割程度を得点できることを意識しよう。

北里大学は初めて解いたが、個人的には結構好きな問題だった。

近いうちに医学部医学科の問題も解こう。

解いた方、お疲れ様でした。

これからも楽しんでいきましょう。

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