2020年度神戸大学の過去問を解いたので解答・解説をしていく。
今回は前期日程(理科系)の問題を解いた。
文科系の問題ではないことには注意してもらいたい。
解説という訳ではなく、あくまで自分用のまとめみたいなものだ。
各大問の詳細な解答・解説は別記事で行っているのでそちらを参考にしてもらいたい。
リンクは各大問の概評に貼ってある。
この記事はあくまで大問ごとの大きな基本方針を述べるに留める。
その問いを初見で見た時にどう考えると解法が見えるかの言語化に注力している。
では、まずは問題から見ていこう。
問題
試験時間(目安):120分
以下のURLは大学の公式HPから入試問題へのリンク。
問題はそちらから確認して欲しい。
URLからのリンクが怖い方は『神戸大学 過去問』で検索してみて欲しい。
2020年度 神戸大学 前期日程 数学
[ https://www.office.kobe-u.ac.jp/stdnt-examinavi/wp-content/uploads/2020/08/03.suugaku_rikei.pdf ]
※上記URL:国立大学法人神戸大学HPホーム > 入試情報 > 学部入学案内 >入試問題及び出題の意図など > 2020年度一般入試(入試問題/出題の意図・評価ポイント/解答例)> 前期日程 数学 理科系 問題
※過去4年分が公式HP(下記URL)から閲覧できます。(2021年8月29日時点)
※掲載終了している可能性もあります。
参考URL『国立大学法人神戸大学HP>入試情報>学部入学案内>入試問題及び出題の意図など』
https://www.kobe-u.ac.jp/admission/undergrad/examin/index.html
解くのを楽しみにしてる方は是非解いてみてほしい。
楽しめると思います。
では、振り返っていこう。
全体
先に問題形式などの確認をしておこう。
時間 | 120分 |
入試科目 | 数学Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・A・B |
出題形式 | 筆記 |
問題数 | 大問5つ |
次に概評。
神戸大学は偏差値55.0〜67.5の国立大学(2021年8月30日時点 パスナビ調べ)。
全体の難易度はGMARCHから早慶上理レベル程度。
完答の難易度は高いと思うが、合格点をとるということであれば基本的な処理でアプローチできる問題も多い。
しっかり部分点を取ることが重要だ。
理系の問題であるため当然といえば当然だが、数学苦手な人が付け焼き刃の知識で受けようものならボロボロになることは間違い無いだろう。
それくらいには難しく、そして面白い。
大問の後半は見たことありそうでない、そして解法のアプローチも状況把握や条件の整理がしっかりできていないといけないという問題で、完答率はそんなに高くないと思う。
大問1,2,3は完答、あるいは75%程度正答したい。
大問4,5は(1)を確実に解いて、(2)は部分点をもらう作戦がいいのではないだろうか。
時間はしっかりあるため、焦らず確実に解法の糸口を見つけられるようにしていきたい。
さて、それでは各大問ごとの振り返りをしていこう。
大問1概評
大問1は剰余の定理と領域についての問題だ。
難易度は日東駒専以上GMARCH以下の問題だ。
解けたかどうかはさておき、すべての小問において方針決めが分かりやすい問題であることは間違いない。
方針が分かる以上はその通りに解いていくのだが、それをしっかり解答に落とし込めるようにしていこう。
それでは解答を見ていこう。
解答・解説 → 「162話 2020 神戸大学 過去問大問1【解答解説】」
(1)剰余の定理
自分がこの問題を見た時に思ったのが「f(x)=x3+ax2+bx+cとおこうかな」だったが、すぐにやめた。
条件が2つで変数を3つ設定しても求められないからだ。
そこですぐに関数自体を求めることは厳しいことに気付いた。
方針を変えて、3次式より2次式の方が考えやすいため導関数f’(x)から考えた。
また、(2)でf’(x)=0が見えていたため、この形が後々便利かなとも考えた。
あとは剰余の定理と不定積分をすれば求めることができる。
自分はこの解答だったが、別解の方が一般的な解答と思われるためそちらも確認してもらいたい。
【別解】(1)剰余の定理
この記事では別解扱いだが、一般的な解答はこちらのように思う。
関数f(x)を求めようとするのではなく、あくまで(x-α)2で割り切れることのみ示せばいい。
あとは剰余の定理を順に使っていけばいい。
(2)剰余の定理
(1)からf(x)の形だけは分かるため、βを求めにいった。
計算自体は1次方程式のため解説も不要だろう。
また、別解で解いた方もf(α+2)=0より、f(x)=(x-α)2{x-(α+2)}を得る。
あとは微分してf’(x)=0を満たすαでないxを求めればよい。
(3)関数の領域、定積分
関数が分かるため、あとはグラフをかいて上下関係を把握しよう。
上下関係を把握したら求める領域を図示して積分。
計算ミスをしないように気をつけよう。
大問2概評
大問2は軌跡と回転体の体積についての問題だ。
難易度はGMARCHレベルの問題だ。
(1)は座標を与えられている上で示せばいいため、普通の軌跡の問題より答え合わせができるという点で簡単になっている。
(2)については媒介変数表示というのが受験生を苦しめるポイントになりそうだ。
小問2つのためそれぞれ時間をかけられるが、計算の分量がそこそこあるため油断せずに解いていきたい。
それでは解答を見ていこう。
解答・解説 → 「163話 2020 神戸大学 過去問大問2【解答解説】」
(1)座標の軌跡
軌跡の問題で鉄板の解法が
P(X,Y)とおいて媒介変数の存在条件を求める
というものだ。
今回もこの方針でいいだろう。
まず、「座標と三角比」というところから単位円を考えたい。
これができないと今回は厳しそうだ。
その後、「三角形の内心」というところからすぐに
- 角の2等分線の交点
- 面積での利用
の方針は立てたい。
辺の長さや角度からPを表しに行きたいため、Pの座標はどうしたら求められるかなという発想は常に持っていなければいけない。
そこで今回は最後に書いているがP(X,Y)とおいた最後の媒介変数表示が見えている。
ゆえに話は「内接円の半径を求ればいい」という話に言い換えることができる。
あとは内接円と半径というところから面積を考えて解答を得る。
(2)回転体の体積
媒介変数表示で厄介!と思った人もいるかと思うが、こういう時こそ基本に立ち返ろう。
求めたいものを見ると結局知りたいのはy2とdxであることが分かり、これらを知るためには(1)の結果を使えばいいということが分かる。
そこから先は計算あるのみだ。
解答ではかなり丁寧に途中式を書いた。
解答としては冗長であるため、入試本番は計算用紙に計算し、もっと省略した解答を書こう。
大問3概評
大問3は場合の数の問題だ。
難易度は日東駒専以上GMARCH以下レベルの問題だ。
和が30程度なので、樹形図や書き上げを駆使していけば求めることはできそうなため、難易度としてはだいぶ簡単かもしれない。
受験本番で方針が立たなければ数え上げよう。
和が高々30程度だ、そんな手間でもない。
ここでは基本解法でしっかり解いていくため、数え上げ以外の方法もしっかり押さえておこう。
それでは解答を見ていこう。
解答・解説 → 「164話 2020 神戸大学 過去問大問3【解答解説】」
(1)場合の数、順列
場合の数や確率の単元において、もっとも重要なのが状況把握だ。
しかし、(そんなことは分かっているけど、それができたら苦労しない)というのが共通の悩みだろう。
状況把握のためには具体化(実験)してもいいし、表や図をかいてもいい。
色々な発想から考えていくわけであるが、1番意識して欲しいのは「今まで解いた基本問題と似ている(同じ)形はないだろうか」と探すことだ。
数学の発想が体系化されている人は、新しい状況を与えられてもすぐに数式化することができるが、凡人の自分にはそれが出来なかった。
そこで自分の知っている知識から何か引っ張り出せないかで悩むと良いことを知った。
新しい状況を数式化するのに時間をかけるのではなく、既知のもので参考になるものはないか知識の引き出しを探ることに時間をかけるのだ。
体系化できている人はこの引き出しを開けるスピードが尋常じゃなく速いのではないかと思う。
基本解法すら分からない問題は解けない問題は数え上げるか諦めることにしている。
さて、本題に話を戻そう。
今回「和が30」というのを見て(和を扱う場合の数の問題ってどんなのがあったかな)と考えた。
色々思い付いたが、その中の一つに「a+b+c=5となる負でない整数a,b,cの組は全部で何通りあるか」みたいな問題があったことを思い出した。
この問題の類題を全く見覚えないという人にはそもそも厳しい問題であったかもしれない。
(そんなのあった!)と思った人は解ける知識は十分にあるため、その引き出しを開ける訓練をしていけばいい。
既知の問題に似たものはないか、ぜひ考える訓練をしてみてほしい。
時間がもったいないということであれば(あの問題の形に似てる!)と思ったら簡単にメモし、解答を確認して方針があってたら飛ばすという勉強法でも良いかもしれない。
さて、これを思いついたらあとはこの問題でこの解法が適切かどうかを判断すればいい。
今回はこの方針で適切であることが分かるのが解答の冒頭だ。
自分はここに結構時間を費やしてしまったが、おかげで(1),(2)の計算自体はすぐに終わった。
(2)場合の数、順列
(1)冒頭の式に代入して終了。
分からなければ「1つの数を1とすると…」という場合分けを沢山して求めればいい。
同じ数字が選ばれているかどうかには注意しよう。
(3)場合の数、組合せ
(2)と明らかに関連がある問題のため、「順列と組合せの違いは何か」というのを考えればよいのがこの問題のポイント。
順列と組合せの違いは「並べ方を考えるか否か」だ。
つまり、(2)において並べ方を考えない状況を答えればいい。
よって、ここからは「並べ方が被っているパターンは何でそれが何通りあるのか」に注目していけばいい。
そうすると自然と解答のような場合分けに行きつき、計算となっていく。
計算よりも数え上げが速そうな時は数え上げてしまおう。
また、場合の数に限った話ではなく、数学全体の話として「全体が求められたら全体から不要な部分引いて必要な部分を求める」という余事象的な発想は持っておこう。
大問4概評
大問4は数Ⅲで扱う関数と極限の問題だ。
難易度はGMARCHレベルの問題。
関数の見た目はよく見る形で馴染み深い。
しかし、解法は中間値の定理やはさみうちの原理などで受験生が意識しづらい形であるため、決して優しくはない。
思いつく人にとってはそこまで難解ではなく、思いつかない人は手が進まないという差がつく問題のように思う。
忘れがちな公式であるからこそ、ここで学べたことを武器として本番でミスをしないようにしていこう。
それでは解答を見ていこう。
解答・解説 → 「165話 2020 神戸大学 過去問大問4【解答解説】」
(1)関数の最大・最小、中間値の定理
答えるべきことは「f(x)が最大となるようなxの値がただ1つ存在することを示せ」となっているが、そのために考えるべきことは「f(x)の最大の瞬間がいくつあるか知りたいからf(x)の増減表を書こう」ということだ。
「ただ1つ」の示し方も考えたが、そもそもf(x)が定義域内でどのような概形なのかを把握しないと始まらない。
そこで解答の方針は次の通りに決まった。
- fを微分して
- f‘(x)=0となるxを求めて
- 増減表をかく
方針が決まった後は淡々と計算していこう。
微分して0かどうか分からない時はもう一度微分しよう。
その際、分母はx2で0より大きいことが分かるため、分子さえ把握すればいい。
あとは分子をg(x)とでもおき、g(x)の符号に着目して考えていく。
するとg(x)の単調減少が見えるため、では両端を調べて符号がどうなっているかどうなっているかを考える。
すると、両端で符号が異なるため、必ずどこかで0を通ったことが分かる。
その値自体は直ちには求められないため、何か文字でおいてそのまま解答を進めよう。
g(x)の符号変化が分かるということはf’(x)の符号変化が分かるということで、f’(x)の符号変化が分かるということはf(x)の増減表を書いて概形を把握できるということだ。
f(x)の増減表をかくと、先ほど文字でおいた値のみで最大値をとることが分かるため、解答を得る。
(2)数列の極限
まず、三角関数を含む極限で考えたいのが次の形だ。
ただ、これはあくまで三角関数の変数が限りなく0に近づく時に有効な手法であり、それ以外では有効ではない。
今回はそもそも変数部分(xn)がn→∞でどのように振る舞うかが分からない。
では、xnをnの式で記述しよう!ともなるのだがそれが難しい。
「xn=tan(xn)となるxnはなにか」と聞かれても難しいのではないだろうか。
そこで方針転換。
三角関数は上記の有名な形の他に、「-1以上1以下」という不等式で表せるためはさみうちが有効に扱える。
今回は「−1以上1以下」ではないが、「不等式と極限」という状況からはさみうちの原理を考えられるようにしよう。
ただ、「−1以上1以下」のような不等式では問題文で与えられず自分の知っている知識から引っ張ってこなければいけないため、
- 三角比は有名な形(上記画像)
- 「−1以上1以下」を利用してはさみうちの原理
というのを押さえておこう。
また、三角関数に限らず不等式と極限でははさみうちの原理を解法の候補に入れられるように知っておこう。
大問5概評
大問5は数列の問題だ。
難易度はGMARCHレベルの問題だ。
(1)は代入するだけなので、正答率は非常に高いだろう。
(2)は漸化式の問題であるのは一目で分かるが、解き方はパッと思い付かない。
細かい解法までの発想は(2)で書くが、こういった見たことがない数列ではとにかく実験して察するに限る。
そのために色々な実験の方法もあったりするので、そういったところを抑えていけば良い。
非常に良い難易度で、(2)の得点者はとても合格に近付くのではないだろうか。
それでは解答を見ていこう。
解答・解説 → 「166話 2020 神戸大学 過去問大問5【解答解説】」
(1)種々の数列
代入して求めていけばいい。
ただし、この代入で確認して欲しいのが
- この数列は循環すること
- どのように計算するか
の2点だ。
(1)で具体化させるのは(2)で一般化する予兆と言っても良いだろう。
その際に(1)で何を見抜いたかというのは非常に重要になる。
たったp=3の1つしか調べていないため、そこまで抽象化を進めることは難しいのだが、極力見抜けそうなところは解きながら疑っておこう。
(2)種々の数列
パッと見よく分からない数列であるため実験で確認をする。
そこで、どんな法則性に基づいて漸化式が成り立っているのかに注目する。代表的なものに
- 単調性
- 周期性(偶奇での場合分けなどは多い)
などがある。
これらがあるだけで絶対値の扱いはグッと変わる。
例えば単調性があれば、絶対値の中身の符号が変わる瞬間が1点のみであるためそこに注目すればいい。
例えば偶数番目で正、奇数番目で負などの周期性があれば絶対値を容易に外せる。
そういったことを知るために実験で確認するのだ。
実験の仕方として、
- 代入
- 関数としてみる
というのがある。
今回どちらでもいけたが、馴染みのある代入で求めた。
そこから何か法則性はないか探る訳だが、ポイントとなるのは絶対値の中身が正か負かという点だ。
そこに注目していけば解答のような発想に至る。
法則性も見えて示すことも見えたらあとは示していけばいい。
数学的帰納法を扱う際には定義域(今回は2≦n≦p+1)には必ず注意しよう。
「帰納法だからすべての自然数」というわけではない。
あくまで使える範囲でのみ使う。
これはあまり練習ではやらないであろうため、これから意識していこう。
さいごに
神戸大学は初めて解いたが、かなり良い問題だったように思う。
学力検査としてもかなり良いだろうし、数学の問題としての面白さも素晴らしい。
たまたまこの年度が良かったのか、それとも例年こんなに素晴らしいのかは分からないが、とにかく絶賛の問題だ。
また2021年度や2019年度以前の問題も解きたいと思わせてくれるような問題だった。
解いた方、お疲れ様でした。
これからも楽しみながら学んでいきましょう。
その他過去問を解く人はこちらから → 『特集 過去問振り返り まとめ』
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